安心して老いることができる介護保険制度へ~地域の要求を保険者に届けた活動報告~

安心して老いることができる介護保険制度へ~地域の要求を保険者に届けた活動報告~

発表者

主任 伊勢 充 (居宅介護支援事業所ファルマ 介護支援専門員)


共同研究者

なし


抄録

【はじめに】

介護保険法は、自立支援と尊厳の保持を主な目的とし、高齢者自身が生き方を自己選択、自己決定できるようになった。2000年の全国平均2911円だった介護保険料が、2023年には平均6014円と倍増、利用料も原則1割だったものが現在は2割、3割負担が発生し、金銭的負担は老後の生活への不安の原因の一つともなっている。保険料は住む市町村に異なり、サービス内容にも格差がある。介護支援専門員は高齢者の身近な相談者として、唯一自己負担のない介護サービスとして存在している。病気や体の相談に限らず、金銭的な悩みや複合的な課題を抱えるケースが増えている。必ず訪れる老いがあっても安心して生活していくためには、より良い介護保険制度、社会保障制度の実現が欠かせない。日々の業務や、地域の事業所、市民団体(弘前市の介護保険を良くする会)との連携を通じて浮かび上がった困りごとや要求を保険者(行政)へ届けてきた活動を報告する。


【実践の経過】

 2022年11月、物価高騰とコロナウイルス感染症が介護サービス事業所に与えた影響をアンケート調査。結果をもとに、2024年介護報酬改定に向けて制度の充実を求めるよう要望書を提出した。2023年6月には自治体毎に異なる要介護認定業務委託料を調査し、県内で2倍の格差があることを明らかにすることで、見直しを求める要望書を提出した。12月には生活保護者のエアコン設置費用助成制度の周知と徹底。生活保護者の受診等のための移送費に係る申請の周知、障害者総合支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用を適正に認める旨の要望書を提出した。


【実践の成果】

 保険者への要望書を提出する際は、新聞社などのマスコミへの投げかけをし、要望の趣旨や保険者の対応を地域へ啓発できるようにした。2022年度から提出した要望書に対しては、大半は明らかな成果はまだ出ていない。アンケート結果や要望書提出時の保険者の対応について、協力してくれた事業所や地域の方へ、学習会やメールにてフィードバックした。


【考察】

 事例に基づく個別の要求を、保険者に正式な形で届けるは容易いことではない。同じような要求を地域や事業所からの声として、保険者へ要望することでよりよい制度の運用へ繋げていくことができる。介護保険法という国の法律でありながら、その解釈は自治体によって様々であり、その曖昧さによって権利が侵害されているケースも少なくない。今後も、介護支援専門員の行動規範である「利用者の不利益につながるような法律等がある場合は、正当な方法で法改正を促す活動をするように努めなければならない」を地域の事業所も巻き込みながら実践していく必要がある。


【倫理的配慮】

 本研究発表にあたり、個人が特定されないことに配慮した。写真の使用に関しては同意を得た。



キーワード: 介護保険、ケアマネジメントによる権利擁護、地域との協働




学術活動

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