アドヒアランス不良の患者様に対するかかりつけ薬剤師としてのアプローチ事例を報告
発表者
髙橋 和希(弘前薬局 薬局長補佐)
共同研究者
石川 隆之、相馬 渉
抄録
- 目的
複数の慢性疾患を持つ高齢者は、多数の薬を服用しなければならないケースが多く、服薬遵守が難しくなり、認知機能が低下していれば、さらに困難となる。また、生理機能の低下により有害事象の発生頻度も高まる。今回はアドヒアランス不良の患者様に対するかかりつけ薬剤師としてアプローチした事例を報告する。
- 事例の概要
病院地域連携室より薬の管理が心配な患者様がいると情報提供あり。患者様は、80代女性、要介護1、認知症、高血圧、脊柱管狭窄症などの疾患があり、クリニック神経科、内科、整形外科通院中。①薬の種類が18種類である、②神経科受診が滞っており約2ヶ月神経科の薬を服用していない、③家族の方の声掛けはあるが、拒薬がみられる、などの問題があった。 まず、かかりつけ薬剤師として、服用中の薬を一元管理することにした。 自宅にある残薬を全て持ってきて頂くと、朝昼夕の残薬にバラつきがあり、どの科の薬か区別できないほどの状態であった。そこで複数化をまとめて一包化し直し、管理しやすい形に変え、次回以降も合包することにした。神経科受診を再開した際に、約2ヶ月前のDo処方(ドネペジル、トリヘキシフェニジル、フルボキサミン、レバミピド、アズレンスルホン酸Na・L-グルタミン、エバミール)に抑肝散料が追加処方となるが、トリヘキシフェニジル、フルボキサミン、レバミピド、アズレンスルホン酸Na・L-グルタミンの減薬について医師に提案し、中止となる。日中は一人でいることが多く、昼の薬が服薬されていないことを内科医師へ情報提供し、次回処方にて毎食後の薬は全て朝夕食後に変更となる。
- 結果
服用中の薬は、18種類から14種類とまだ多いが、拒薬が無くなり、服用回数が1日3回から2回になったことで飲み忘れもなくなった。以前は着替えができなくなることや、異常行動なども見られていたようだが、中核症状及びBPSD(周辺症状)が落ち着いてきた。
- 考察
服用回数や薬剤数を減少できたことは、患者様のQOLの改善や介護者の負担軽減につながった。高齢者に対して慎重に投与すべき薬剤も減薬できたことで、薬物有害事象防止の点からも有意であったと考える。今回は地域連携室からの情報提供により関わることができたが、薬局としても気づきのアンテナの感度を上げ、軽いフットワークで患者様をサポートしていくことが重要であると考える。
- キーワード
かかりつけ薬剤師、ポリファーマシー